櫂(kai)アルバムレビュー
【鈴木りゅうた/音楽ライター】
東京から巻き起こるJamband Beyond!」
彼らの音楽を聴く=様々な世界を、溢れる音と巡る旅
音楽のスタイルに関わらず多方面で活躍するドラマー中村亮。彼の率いるAKIRA NAKAMURATrickstewart Bandとして2作目のアルバム『櫂(kai)』はいろんな意味で解放され た音楽が詰まっている。ホーンにはソプラノ、テナーサックスが元晴、アルトに浦ヒロノリ、柴山 哲郎がギター。ベースに高橋佳輝、ヴォーカルとアコースティックギターが数曲で多大なインパク トを与えるfasun、そしてドラムはもちろん中村というメンバー。お互いのサウンドを感じつつ演 奏しているのが伝わるライヴ感満点の演奏を中村は「ジャムバンド的。東京の音」というがこのア ルバムはバンドがまさに東京の波を漕ぎ出して目的を持って彷徨っていくようだ。
楽曲は巧みに構成されているが各ミュージシャンに自由なスペースを設けてそれぞれのプレイ ヤーの個性を全面に出してくる。バンドの一体感とそれぞれのパーソナリティが混ざり合い様々な 風合いを見せて統一感を持ちながら様々な場所へと誘う。オープニングのホーンのアンサンブルに よるファンタジックで印象的なメロディから「このアルバムは一体どうなっていくんだろう?」と 期待せずにはいられない。その後、元気な明るいジャムへと突入していく”7/23”、開放感溢れる ファンキーな“from dusk till down”、fasunの歌がどこかノスタルジックでスケールの大きな愛 の溢れる世界を描く”Home to you”そしてそのアンサー的な“Be Here”。暗い夜が空けるような “Rise”での柴山のミステリアスなギターなどそれぞれの楽曲が描く物語が展開されていく。
時にエネルギッシュに、時に感傷的に時に優雅な楽曲たちからは現在ベルリンに住み様々な場 所でいろいろな体験を重ねて来た中村のオープンマインドな世界観が溢れいている。聴いてるうち に”ジャムバンド ビヨンド”という言葉が浮かんだ。強烈な旅情感とともに。
AKIRA NAKAMURA Trickstewart Band
2nd アルバム「櫂(kai)」2018年2月7日発売